「未来をひらく微生物」
「未来をひらく微生物」は、微生物という肉眼では見えない生物に焦点をあてた論説文である。分解者としての微生物の働きと、その働きを人間が発酵という形で利用してきたこと、近年では環境問題の解決にも利用しようとしていることなどが書かれている。また、環境問題の解決には、自然のつながりを理解し、それを活用していく必要があることが、全体のまとめとして述べられている。
この手の文章の常として、まとめの部分が少々荒っぽい気もするが、微生物を利用して環境問題を解決をはかる部分などは生徒の興味も引くし、「手引き」の「微生物を利用した環境問題の解決策には、ほかにどのようなものがあるだろう」という課題につなげるのも悪くないと思う。
さて、今回注目したいのは、本文中の「発酵」と「分解」の言葉の使い分け。
筆者は、「発酵」を「微生物が物質を分解し、ほかの物質に変えて放出する現象」と説明しており、そこから考えると、「発酵」=「微生物が行う分解」となりそうなのだが、実際には両者は巧みに使い分けられている。
★本文中の「発酵」の例を「○○が○○を○○に」の形で整理してみると
・何かの微生物が何かをパンに
・何かの微生物が何かをしょうゆに
・何かの微生物が何かをかつお節に
・何かの微生物が何かを納豆に
・イースト菌が何かをパンに
・イースト菌が何かをビールに
・何かの微生物が廃棄されたサトウキビやトウモロコシのでんぷんをエタノールに
★本文中の「分解」の例を「○○が○○を○○に」の形で整理してみると
・乳酸菌が牛や羊のミルクを乳酸(ヨーグルト)に
・何かの微生物が落ち葉や動物の死がい、し尿を土に
・何かの微生物が生分解性プラスチックを水と二酸化炭素に
・何かの微生物が少量の汚染物質を何か<無害なもの>に
・ある菌が重油(石油)を何か<無害なもの>に
・ある菌が発ガン性のあるトリクロロエチレンを何か<無害なもの>に
「発酵」は「○○に」の部分、「パン」や「納豆」「かつお節」「エタノール」が<人間の役に立つもの>である。それに対して「分解」は「○○を」の部分が<人間にとって役に立たないもの>である。すなわち、本来的には同じものである「発酵」=「微生物による分解」のうち、「資源をつくりだす」面から述べたものが「発酵」、「廃棄物を処理する」面から述べたものが「分解」ということになる。(「分解」の最初の例「乳酸菌が牛や羊のミルクを乳酸(ヨーグルト)に」だけが異なっているが、これは本文中にまだ「発酵」という言葉が登場していないからと考えられる)
もっとも、この使い分けはあくまで人間にとっての使い分けであって、微生物からすれば、「発酵」と「分解」は区別されるものではない。このことは、筆者の意図とからめて留意しておく必要がある。
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